新型インフルエンザによる学校公演への被害実体について

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更新日 2010-07-27 | 作成日 2008-04-27

新型インフルエンザは子どもの文化へも猛威を振るっています。

063.jpg 新型インフルエンザの猛威は、今年一年を振り返っても、大きなニュースの一つでした。6月には関西地方を中心に、その厳戒態勢と皆がマスクをして通勤、通学する姿がニュースに流れ、その異様な雰囲気は記憶に新しい事と思います。そして9月。新型インフルエンザは全国にその猛威を振るい、多くの被害をもたらしました。そんな中、多大な被害を受けながらまだ多くの人の目に触れられなかったニュースがあります。小・中・高等学校での演劇鑑賞教室(学校公演)の中止問題です。

私たち、劇団うりんこでも12月2日現在、小学校で42日、中学校2日、高校1日 その他4日、合計49日のキャンセル及び延期の影響を受けました。金額にして約二千万円にものぼります。
キャンセルや延期の連絡は、多く場合、電話で伝えられますが、中には公演当日、舞台準備を進めているその現場で中止が伝えられることもありました。特に月曜日の朝方に電話連絡が集中することが多く、電話の音に恐々とする毎日が続きました。学校の先生方も子ども達の出席状態に一喜一憂しながら、苦渋の判断を強いられてきたと思います。

劇団が、年間を通して演劇鑑賞教室の依頼を受ける時期は、5月、6月、9月、10月、11月のほぼ5ヶ月程度です。中でも10月、11月は公演依頼が最も多い時期です。また演劇鑑賞教室による公演収入は劇団の公演収入の4割を占めており、この時期のキャンセルは経済的な打撃も本当に深刻で、今後の劇団運営に頭を抱えこんでいる状態です。このことは劇団うりんこだけでなく、全国の児童演劇団体に重くのしかかっています。しかし何よりも口惜しいのは、こうした事態に対する救済措置がまったくないことです。

例えば旅館などでは予約の取り消し時にはキャンセル料が発生するケースがあります。その日のために部屋を確保し、料理をそろえ、従業員はゲストを迎える準備をしています。もしその労力が当日の一本の電話で無下にされるようなことが続いたら、経営は成り立ちません。
しかし演劇鑑賞教室の場合、その多くが学校の判断と保護者の費用負担で成り立っている現実を考えると、見てもない公演に対して保護者にキャンセル料を請求することは学校にとってはとても困難なのが現実です。

このように今回の新型インフルエンザは、優れた芸術を担保し続けようとする劇団に多大な被害をもたらすと同時に、我が国の文化的状況の虚弱さをもあらわにしました。

平成13年に交付された文化芸術振興基本法では基本理念3項に「国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することが出来るような環境の整備が図られなければならない。」と明記されています。これは国や地方自治体の果たす役割と責任がふれられています。確かにその後、文化庁が主催する「子どものための優れた舞台芸術体験事業」や、(財)日本芸術文化振興会の助成による「子どものための巡回演劇教室」「高校生・中学生のための巡回公演」などが実施されています。しかし芸術団体による芸術鑑賞行事は国の事業のそれと比べると、観劇する子供の数から見ても圧倒的に多いのが現実です。あるデータによると、子ども時代に演劇を見た子どもの95%が小学校の時にみたとこたえているというのです。これらの多くは学校が作品を選択しその費用を保護者が創出していです。子どもに見せたい劇団と先生が一緒になって作り上げているのです。

新型インフルエンザから子どもの「文化権」を守りたい。


こうしたことを考えると演劇鑑賞教室はまさに文化芸術振興基本法の成立以前からこの法律の理念を実践していたといえるのではないでしょうか。文化芸術振興基本法が生きた法律として機能するには、当然ながら国や地方自治体による予算措置が必要です。名古屋市などのように観劇料を一部負担している自治体もありますが、しかしキャンセル発生時にそれがキャンセル料の支払いにまで充てられるわけではありません。また費用の創出を地方自治体だけに任せるとなると否応なく自治体の経済規模などに影響を受けてしまいます。文化芸術振興基本法が機能するためには多くの子どもたちがより多くの芸術体験を受けられるようにすることと同じように、その機会が補償される制度作りが必要なのではないでしょうか。そうすれば今回のような問題に対しても、芸術団体のみが泣き寝入りするような事態は避けられることと思います。

いま、うりんこ劇場ではクリスマス公演にたくさんの子どもたちが足を運んでいます。子どもたちが笑顔になれる機会が失われることのないよう、このホームページへ足を運んで下さる皆さまにまずその実態を知ってもらい、多くの関心、お声を挙げていただけばと思い掲載いたしまた。ご支援の程、よろしくお願いいたします。(2009.12.19)

劇団うりんこ