ヘンテコ長屋の赤おにドン平
ものがたり
時は1853年・・・黒船来航の頃。
ヘンテコ長屋にトン平という泣き虫な男の子がそれは気の強いお婆さんと二人で暮らしておりました。
トン平は気が弱く、何かあるとすぐに泣くし、読み書き算盤も苦手…。
そんなトン平の得意なものが一つありました。
それは「ウソ」です。トン平は「ウソつき」の大名人、トン平にかかれば誰でもスッカリ騙されちゃう。
ある日、お婆さんに絶対にしてはダメと言われていた火遊びをしたトン平は畳を焦がしてしまいました。さぁ、お婆さんに知れたら大変です。
トン平は熱が出たとウソをついて「焦げ」の上に布団を敷いて寝ています。
「明日になったら畳をひっくり返して誤魔化そう」などと悪智恵を働かせておりますと・・
翌日、自分の布団の下からスースーと風が吹くようで薄ら寒いのであります。
さぁ、「焦げ」ならまだしもこんな古井戸隠しようがありません。お婆さんが戻ってくるまでになんとかしなければ・・・でも何でこんなものが・・・それはなんと地獄に繋がった井戸だったのでした・・・。
人はどんな時に嘘をついてしまうのでしょうか。
そして、どんな気持ちになるのでしょうか。
私たちの周りには「嘘」をついてしまう瞬間がいっぱいあります。大人にも子どもにも。
悪い事を隠す為だったり、お金儲けの為に人を騙したり。いえ、たとえ大切な人を喜ばせたくて言った嘘でも、嘘をついた人の心には何かが起こります。ばれるのが怖くてドキドキしたり、さらに嘘を重ねたり、人が安心する事はありません。
嘘をついた時の心の痛みは、嘘を重ねる度にいつか麻痺していくのでしょうか? それとも積み重なってどこかに溜まっていくとしたら…? もし、嘘をつく度に心に種のような物が出来て、そしてある日一斉に芽を出してしまったら…?この物語の主人公トン平は、嘘つきの天才。誰でもすっかり騙されてしまいます。たまりに溜まったトン平の嘘。さて、その嘘の顛末やいかに!?
劇団うりんこ
「家の中のポッカリ穴」
僕が子供の頃、六畳一間のアパートに家族四人(父、母、祖母と僕)で住んでいました。
今、考えるとよくそれだけの空間で四人も生活していられたなぁ・・・と感心します。なにしろ僕が中学三年になって受験体勢になるまでその超ギュ―ギュ―詰めの生活は続いたのです。三年になった時、同じアパートの二階に空きが出来たのでその部屋に僕だけ移ったのです。あの時ほど人生で開放感を味わった事はありませんでしたね。で、本題はその超ギューギューの頃の話です。
その部屋ではとにかくよくモノが無くなったのです。無くなったと言う<消えた>と言った方が正しい。「私は確かにここに置いたのっ!お婆ちゃんでしょ!」「知らんわっ!あんたこそ私の帳面どこやった」「知らんっ!」「典彦だろっ!どこやった」「それより僕のミニカーどこ」「どっかその辺だわっ!」・・・毎日こんな感じでケンカ腰。「その辺だわ」って言われても六畳一間ですから全部がその辺。他にどこにも行くハズがないのでその部屋のどこかにあるには違いないのだけれど、消えたモノはとうとう出て来ませんでした。その頃、お婆ちゃんは「この部屋には穴があいとる」って言ってました。僕らの目には見えない穴があいていてそこからモノが落ちて無くなる・・・と言う分析でした。「なるほどそうじゃなきゃ説明出来ないな」と思ったと同時に「いつか自分もその穴に落ちちゃったら」と恐怖を覚えたのでした。
さて、次回僕が挑戦する新作はそんな<家の中の穴>についての物語です。ある日突然、
ヘンテコ長屋のトン平の寝床の下にポッカリと井戸が・・・深い深い井戸・・・貞子が出て来そうな井戸・・・うひゃぁぁぁ、なんだか怖くなってきたぞぉ。お楽しみ、お楽しみ!
佃 典彦
スタッフ
作・演出=佃典彦
美術=松本ひろし
音楽=雨宮賢明(アメジック音工房)
音響効果=椎名カンス
衣装=ごとうゆうこ
照明=小島隆之
イラスト=長谷川義史
宣伝美術=天野貴子