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スタッフ


原作=エヴァ・イボットソン

訳=三辺律子

脚本・演出=山崎清介

美術=岡本謙治

照明=山口暁

音響=近藤達史

衣裳=三大寺志保美

殺陣=戸谷昌弘

舞台監督=原田邦英

制作=西尾栄儀

デザイン=柳川晃義

写真=清水ジロー

キャスト

原田 邦英 ・ 下出 祐子
大谷 勇次 ・ 青山 知代佳
内田 成信 ・ 柴田 早苗
山内 周祐 ・ 宮腰 裕貴
新美 英生 ・ 鷲見 裕美

物語

ロンドンの片隅に、小さな会社があります。その名も、「幽霊派遣会社」。住む場所の無い幽霊と、幽霊をひきとりたい人間の仲介をする会社なのです。
ある日この会社にやってきたのは、ウィルキンソンさん一家。戦争で死んでしまい、幽霊になってしまった一家です。
そんな一家に紹介されたのは、大金持ちの少年オリヴァーが一人で住む、大きなお屋敷。ひとりぼっちのさみしさで生きる気力を無くしていたオリヴァーでしたが、心優しいウィルキンソンさん一家との出会いで、次第に元気を取り戻していきます。
ところが、彼を亡き者にしようと企むいとこのフルトンが、凶暴な夫婦の幽霊をオリヴァーのもとに送り込んだのです。さて、オリヴァーとウィルキンソンさん一家の運命は…!?


原作者紹介


原作者 エヴァ イポットソンは、8歳の時ナチス台頭によってウイーンからイギリスに移住。
その戦争体験により世界を客観的かつ冷静に見るようになる。
ユーモア溢れるファンタジーで高い評価を得ているが、作品には様々な偏見に対する風刺
や批判がさりげなく盛り込まれている。
この作品でも幽霊になっても生き生きと活躍する人物を描くことで、人間への愛と命の尊厳を謳い、それ脅してしまうのも人間であると風刺している。

みどころ

このお芝居は、この世の人間とあの世の幽霊が共存して信頼関係を深めていくという、ユニークな設定の物語です。
大きな階段のある2階屋のセット、可動する門柱、机と椅子の舞台装置を自在に変化させて16の場面を作り、幕開きから片時も休むことなく10人の役者で33人の登場人物を演じ分けていきます。
奇想天外なストーリーの展開、ウイットに富んだ会話のやりとり、所狭しと動き回る個性的な登場人物たちによるダイナミックなステージングや仕掛けなど、生の舞台ならではの迫力と醍醐味を存分に味わってください。
人間の孤児の男の子と触れ合う幽霊の家族、幽霊が見える人間と見えない人間たち。おぞましい幽霊と称されてもどこか憎めない幽霊夫婦など死んでも生き生きとしている幽霊たちが活躍するこの舞台。そこには戦争を体験した原作者の「人間の魂=命」への深い尊厳と愛情が、愚かな事をしでかしてしまう人間への警告がエスプリとなって流れています。


演出(山崎清介)

このお話は、あの世の幽霊一家とこの世の少年のお話です。

幽霊って、僕は見たことはありませんが、幽霊やお化けにまつわるお話は子どもの頃から数多く見たり読んだりしています。この作品をごらんになるお客様もきっとお化けのお話のひとつはご存知でしょう。でも、人間とお化けが仲良く協力して悪に立ち向かっていくお話は今まで見たことがありません。
孤児院で育った少年は、ある幽霊一家と知り合いそこに家族の暖かさを得ます。ところが話は二転三転、少年の心は喜びや悲しみや憎しみさえも感じ、この幽霊一家のために闘う道を選びます。
この世の人間とあの世の幽霊が共存して、信頼関係を深めていく、このお話の設定はとてもユニークなものです。でも、人間同士の絆も同じことなのだと感じさせてくれます。家族、友人、他人、文化や国籍の違いはあっても人間という生き物は決して一人で生きていくことは出来ないのだと、あらためて感じなければならないのだと思います。
劇団うりんこのベテランと若手の役者たち10人で、この「ダイアル ア ゴースト」は動き始めました。うりんこならではのチームワークで、幕開きから片時も休むことなく全員が各場面に違う役柄で登場し、幕が閉じるまで演じ続けます。まさに全員野球の心意気でこの芝居は成り立っています。
観ていただいたお客さまの心に少しでも、演じる役者たちの言葉が残って下されば、創り手として嬉しいかぎりです。

 

劇評


目に見えないものにこそ大切なものが潜んでいるのではないかと、山崎清介さんが洒落っ気たっぷりに問い掛けた意欲的な作品でした。
子どものためのシェイクスピア劇の手法が随所に見られ、子どもたちはもちろん大人も楽しめる作品になっているのが、見事だと思いました。
話は孤児院にいる孤児が莫大な遺産相続者であるとが分かり、その孤児の従兄弟にあたる兄妹が、その遺産を横取りしようとしますが、第二次世界大戦時に敵の空襲で爆死した一家の幽霊が阻止するという、人間と幽霊が入り乱れて権謀術数を凝らすものでした。
設定で奇抜だったのが、幽霊を人間社会に派遣するという奇想天外な発想で、しかも派遣会社の従業員が幽霊の派遣先を間違えるという過ちを犯す展開は、シェイクスピア劇を連想させました。
装置は、自在に移動する豪華な劇場のカーテンらしきものと二階建ての二重舞台だけで、リズミカルな変化が素晴らしく、主役をはじめ一部の役者以外は何役も演じ分けた演劇陣の熱演がとても印象的でした。
  
河野光雄(演劇評論家)