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更新日 2016-10-27 | 作成日 2016-04-03

罪と罰




Staff

原作:ドストエフスキー
訳 :工藤精一郎(新潮文庫)
脚本・演出 山崎清介
スタッフ
美術: 岡本謙治
照明: 山口 暁
衣裳: 三大寺志保美
音響: 角張正雄
舞台監督: 井上 卓
宣伝美術:デザイン 柳川晃義
写真:清水ジロー

Cast

原田 邦英 ・ 下出 祐子
大谷 勇次 ・ 青山 知代佳
内田 成信 ・ 柴田 早苗
村井 美奈 ・ 宮腰 裕貴
新美 英生 ・ 鷲見 裕美

Story

鋭敏な頭脳を持つラスコーリニコフは、休学中の貧しい大学生。
「すばらしい目的があれば、一つの罪悪は許されるはずだ。」という独自の理論のもと、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、
その財産を将来のある青年たちのために転用しようと企てる。だが偶然その現場に現れたその義妹まで殺してしまう。
この予期せぬ第二の殺人が、ラスコーリニコフの心に重くのしかかり、
彼は絶えざる恐怖と罪の意識におびえるみじめな自分を発見しなければならなかった。
それでも自分の罪を認められないラスコーリニコフは、家族や友人から逃げるようにさまよい、行く先を探し続ける。
彼を犯人と見抜いた判事ポルフィーリイは、じわじわと彼を追いつめてゆく。

Message

「罪と罰」が執筆された1865年のロシアは、経済的格差と社会的不安が増大する革命前夜でした。
犯罪率や自殺者の増加、飲酒や性の乱れも深刻な社会問題となっていました。
急激な価値観の転換が行われる中で青年層が生き方を見失う事を予言し、強烈な人間回復への願望を訴えた「罪と罰」。
私たちは147年前にドストエフスキーが生み出した青年の姿に現代が抱える「闇」と人間への「希望」を強く感じました。
「罪と罰」という物語の果てに見つけた確かな真実。「人が人間になるためには人間が必要である。」
147年の時を超え、このメッセージを若者に伝えたい。切実な願いを込めて、この不滅の傑作を舞台化いたしました。
(劇団うりんこ)


「罪と罰」この重厚な題材、有名な長編小説ですが、ちゃんと読んだことはありませんでした。気合を入れて読んでみると面白い!!! 
そしてこの小説を舞台化するに向け、ラスコーリニコフという青年の理論、
彼を取り巻く様々な登場人物たちの生き様を語り合いながら「罪と罰」の分析を繰り返しました。
世の中には「決まり」があります。人として生まれた以上、時代や国の違いはあれど「決まり」のなかで生きて行かなければなりません。その「決まり」をどうとらえるかは人それぞれです。
ラスコーリニコフという青年が考え悩んだ末の行動を今の人々がどうとらえるか、「決まり」を破ったと考えるのかそうでないのか。
答えは、観ていただいたお客様の考えにゆだねようと思います。
この結末の先、未来のラスコーリニコフがどう生きて行くのか、その答えは小説を読んだ人たちに、
そしてこの舞台を観ていただいた人たちにゆだねられているのですから。
「罪と罰」この重厚な題材、有名な長編小説ですが、ちゃんと読んだことはありませんでした。気合を入れて読んでみると面白い!!! 
そしてこの小説を舞台化するに向け、ラスコーリニコフという青年の理論、
彼を取り巻く様々な登場人物たちの生き様を語り合いながら「罪と罰」の分析を繰り返しました。
世の中には「決まり」があります。人として生まれた以上、時代や国の違いはあれど「決まり」のなかで生きて行かなければなりません。その「決まり」をどうとらえるかは人それぞれです。
ラスコーリニコフという青年が考え悩んだ末の行動を今の人々がどうとらえるか、「決まり」を破ったと考えるのかそうでないのか。
答えは、観ていただいたお客様の考えにゆだねようと思います。
この結末の先、未来のラスコーリニコフがどう生きて行くのか、その答えは小説を読んだ人たちに、
そしてこの舞台を観ていただいた人たちにゆだねられているのですから。
(脚色・演出   山崎清介)


Theater review(劇評)

「なんと面白い話なのか」

 「罪と罰」という小説は、深刻な思想とか難解さのイメージをまとっている。敷居は高く、確かに最初はかなり骨が折れるのだが、実は一種のメロドラマ。殺人、恋愛、親子の情などで読者の感情を激しく揺さぶりながら、感動の大団円へと導く。
 劇団うりんこの「罪と罰」は、そんな小説の面白要素を抽出し、魅力的かつわかりやすく観客に見せた。小説「罪と罰」を読んだことがない人がこの舞台を見たとして、ちっとも難解だとは思わないだろう。むしろ、何と面白い話なのかと思うはずだ。
 滑らかなストーリーテリングを支えるのが舞台装置だ。舞台中央に椅子や机などの置かれた汚い室内空間がある。ここを主人公ラスコーリニコフ(にいみひでお)の屋根裏部屋など、主な演技スペースとする。その奥にドアがあるが、可動式で、ドアを動かすことで違う部屋の印象を与えることができる。そしてその部屋の奥の壁の両側に階段を作り、壁の上の空間と階段でも様々な場面が演じられる。 殺人が行われた部屋のドアを客席に垂直に置き、それを挟んでの男とラスコーリニコフの対峙、さらに階段を上り下りして同じドアを今度は2階の部屋のドアに見立て、ペンキ職人たちが出ていき、そこにラスコーリニコフが入り、その横を男と大家がすり抜けていく——というふうに見せていた。これが実にわかりやすかった。
 脚色の一つの特色としては、ラスコーリニコフに殺される老婆アリョーナ(青山知代佳)とその妹リザヴェータ(下出祐子)が、殺された後すぐに起き上がり、幽霊としてその後のストーリーにも参加することがある。この2人はとぼけた感じで、それにより殺人にまつわる陰惨さがなくなり、観客にとっては見やすくなった。またその後この2人がラスコーリニコフの前に登場することで、ラスコーリニコフの罪悪感を強める役割を果たした。これはうまい方法だった。
 演技面では主役のにいみが、偏屈な中に純粋な情熱を秘めたラスコーリ二コフとして適役だった。またベテランの原田邦英演じる予審判事ポルフィーリーが、ラスコーリニコフに共感を覚えながら、したたかに追い詰めていく場面が、大きな見どころを作った。
 劇団うりんこの公演を見るのは初めてだったが、観劇人口が多いとは言えない地方で多数の劇団員を擁して40年も活動してきた老舗劇団の底力を見せつけられた思いだった。
(2013年10月5日京都市北文化会館公演より)

【筆者略歴】
水牛健太郎(みずうし・けんたろう)
 ワンダーランドスタッフ。1967年12月静岡県清水市(現静岡市)生まれ。高校卒業まで福井県で育つ。東京大学法学部卒業後、新聞社勤務、米国留学(経済学修士号取得)を経て、2005 年、村上春樹論が第48回群像新人文学賞評論部門優秀作となり、文芸評論家としてデビュー。演劇評論は2007年から。

出典 ・小劇場レビューマガジン・ワンダーランド
http://www.wonderlands.jp